【論風】博士の就職難 官民で社会進出の支援を (1/3ページ)  日本では博士になっても就職できない人が多い。深刻な社会問題だ。最近は毎年約1万2000人の博士が誕生する。そのうち大学や企業に就職したり医師になる人は約70%に過ぎず、残りの約30%、4000人は就職できない。博士は、優れた才能を持った人が努力をして初めてなれるものだ。しかも、博士になるまでの教育には国立大学、私立大学を問わず、直接・間接に多額の税金が投入されている。こうして生まれた貴重な人材が社会で十分活躍していないのは、日本にとって大きなマイナスだ。  近年、博士の数が急増  日本の博士制度は、1887(明治20)年に導入され、120年以上の歴史を持っている。戦前は「末は博士か大臣か」といわれたほど希少な存在だった。  第二次大戦後、学校教育法の制定により、博士制度が整備され体系的な博士の養成が行われてきた。1990年代に入り大学院重点化が進められ、博士課程の定員が大幅に増えた。  95年には科学技術基本法が制定され「ポストドクター等1万人支援計画」が作られ、博士の数はさらに増加した。ポストドクターはポスドクと略称されるが、博士号を取得した若手研究者で、任期2〜3年で雇われている。いろいろな大学や研究機関で多くの指導者にめぐり会うことにより、研究レベルを広く、高くしようという狙いである。しかし博士が増加しても、大学や研究機関の教員や研究者のポストが増えないため、「余剰博士問題」が生じている。 【論風】博士の就職難 官民で社会進出の支援を (2/3ページ) 活躍分野拡大を  外国では、博士になると大学や研究機関のポストにつくだけでなく、民間企業に就職する人、公務員になる人、ベンチャーを始める人など、いろいろな分野で活躍している。  しかし日本では、博士になる人は大学教授や研究所の研究員などアカデミックな分野で活躍することを目標にしており、他の分野に就職をしたがらない人が多い。  人口比でみれば博士の数は日本は米欧よりも少ないのだから、博士の数を減らすより、活躍分野を広げる拡大均衡を目指すべきだ。  民間企業は受け入れ体制、処遇、社内教育を整え、博士に活躍してもらう工夫をする。企業はこれまで博士を研究所で研究をしてもらうために採用してきたが、これからは広く企業の業務全般で働いてもらった方がよい。  博士自身も、アカデミア以外の分野で活躍するように意識を変える必要がある。博士は専門分野では優れているが社会適応力に問題があるとの指摘もあるので、企業で働くには社会常識や協調性を身につけなければならない。  政府は博士の社会進出をもっと支援すべきだ。既にキャリアパス多様化やイノベーション人材育成のための施策を講じており、スーパー連携大学院のように最初から広く社会で働くイノベーション人材の育成を目指す試みもある。これら施策の拡充が望まれる。 【論風】博士の就職難 官民で社会進出の支援を (2/3ページ) 活躍分野拡大を  外国では、博士になると大学や研究機関のポストにつくだけでなく、民間企業に就職する人、公務員になる人、ベンチャーを始める人など、いろいろな分野で活躍している。  しかし日本では、博士になる人は大学教授や研究所の研究員などアカデミックな分野で活躍することを目標にしており、他の分野に就職をしたがらない人が多い。  人口比でみれば博士の数は日本は米欧よりも少ないのだから、博士の数を減らすより、活躍分野を広げる拡大均衡を目指すべきだ。  民間企業は受け入れ体制、処遇、社内教育を整え、博士に活躍してもらう工夫をする。企業はこれまで博士を研究所で研究をしてもらうために採用してきたが、これからは広く企業の業務全般で働いてもらった方がよい。  博士自身も、アカデミア以外の分野で活躍するように意識を変える必要がある。博士は専門分野では優れているが社会適応力に問題があるとの指摘もあるので、企業で働くには社会常識や協調性を身につけなければならない。  政府は博士の社会進出をもっと支援すべきだ。既にキャリアパス多様化やイノベーション人材育成のための施策を講じており、スーパー連携大学院のように最初から広く社会で働くイノベーション人材の育成を目指す試みもある。これら施策の拡充が望まれる。