【教育動向】返済の必要ない奨学金を、でも条件は「厳しく」 経済同友会
2010.4.19 10:00
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経済団体の一つである「経済同友会」は、保護者の経済格差が子どもの教育格差につながらないようにするため、返済の必要のない「給付奨学金」の制度を創設することなどを求める提言を発表しました。奨学金の充実は、民主党もマニフェスト(政権公約)の中に掲げており、国の奨学金制度の見直し論議にも弾みをつけそうです。
提言は、年収など家庭の経済力が子どもの教育環境に大きな影響を及ぼしていると指摘し、家庭の経済力が低いために大学進学を諦める者が増えれば、高等教育の機会均等を阻害することになると懸念しています。そのため具体的な方策として、大学進学者などに、返済の必要のない給付奨学金の制度を創設するよう求めました。
現在、日本の奨学金制度の中心を占めているのは、独立行政法人「日本学生支援機構」(旧日本育英会)の奨学金です。しかし、同奨学金は原則として、卒業後に返済する必要のある「貸与奨学金」であるうえ、その多くは利子(上限3%)が付く「有利子奨学金」です。このため「金融機関の奨学ローンと実質的には変わらない」と指摘する声もあります。また、卒業後の返済の負担を心配して、奨学金の申請を諦める者もいる、と言われています。
このため同友会は、日本学生支援機構の奨学金の中に、新たに給付奨学金の制度を創設するほか、現行の貸与奨学金についても、卒業後の年収に応じて返済額を減額したり、卒業時の成績が優秀だった者の返済金額を減額したりすることを提言しました。西欧諸国の国公立大学は基本的に授業料が無料というところが多く、授業料が高いと言われる米国でも返済の必要のない給付奨学金が公的奨学金や民間奨学金の主流を占めています。経済協力開発機構(OECD)の調査でも、加盟国中で日本は高等教育の私費負担が韓国に次いで2番目に重い国とされています。
ただ、提言の特徴は、給付奨学金の受給に、高いハードルを設けていることです。具体的には、給付奨学金は年額60万円で、受給者は保護者の年間所得が「400万円以下」であり、かつ大学入試センター試験の成績が「上位15%以内」としています。給付対象者の規模は、大学進学者全体の5%、1学年約3万人と見込んでいます。
条件を厳しくしたのは、国の財政事情の悪化による財源問題とともに、大学教育の質を高く保つことを、強く意識しているからです。しかし、家庭の経済力が子どもの教育格差を招いているという現実を考えると、低所得層の子どもにとって、これはなかなか厳しい条件だと言えるのではないでしょうか。
このほか、国立大学の入学金を廃止するか、または入学金相当額を各学年の授業料に均等に上乗せすることで、学生や家庭の初年度納付金の負担額を引き下げることなども提言しています。